【超ネタバレ】名探偵コナン『紺青の拳』の徹底解説!考察&感想(She=船の意味・犯人の動機・蘭の行動・明かされなかった謎など)

劇場版,考察

\この記事は盛大なネタバレを含みます/
映画画像
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.


今年も観てきました劇場版名探偵コナン!
端的に言って超面白かったです!!

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ちなみにこの記事は映画で使われたトリックなどの解説に加え、映画で明かされなかった小ネタについてもガッツリ書いてます。超長いよ!




紺青の拳とは

ブルーサファイア
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

世界最大級のブルーサファイアのこと。
海底に沈み、長い間行方不明になっていた海賊王の宝です。
発見したのはシンガポールの資産家で武道が大好きなジョンハン・チェン。(空手大会を主催したおじいさん)

怪盗キッドと紺青の拳

エレベーターに貼り付けられたキッドカード
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

当初、怪盗キッドは『紺青の拳』を盗むつもりはありませんでした。
しかしシンガポールで起きた殺人事件(シェリリン・タン殺人事件)の重要参考人に指名されたため、急遽方針を変更。

キッドは濡れ衣を晴らすため(売られた喧嘩を買うため)、シンガポールに向かいます。

第1の殺人事件

刺殺事件
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

弁護士のシェリリン・タンがショッピングモールで刺殺された事件のこと。
彼女の背中には短刀が刺さっており、負傷したままホテルのエレベーターからショッピングモールまで歩く姿が目撃されていました。

殺害の動機

犯行動機は「邪魔だったから」と「情報を盗まれた恨み」です。
(ここから犯行動機の解説に入りますが、複雑な話なのでちょっと長いです。)

レオン視点のストーリー

犯人のレオンは自信過剰でプライドの高い男です。
彼はシンガポールの都市開発に関わった際、自分が出した案を馬鹿にされたことを深く根に持っていました。
そのため「自分の案が正しかった」と周囲に認めさせるために、海賊を使って街を破壊し、更地となった場所に理想の都市を生み出すことで自分の力を誇示したかったのです。
(「どうだ、私の考えた都市は素晴らしいだろう。私を馬鹿にしたジジイ共を嘲笑ってやる。ドヤァ……!」と威張りたかった)

そんなレオンが海賊との取引に使ったのが、世界最大級のブルーサファイア『紺青の拳』でした。

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「最大級のブルーサファイアをあげるから、代わりにシンガポールを破壊してくれない?」ということ

レオンは取引材料の紺青の拳を手に入れるため、紺青の拳が眠る場所を知っている海洋研究家(リシの父親)を利用&殺害。海底探索に挑みます。

ちょっと蛇足:
都市開発のために街を壊すレオンに対して、「こんなヤツいない」「動機がおかしい」と批判する人も多いみたいですが、実はそうでもありません。この手の凶悪事件は昔から世界各地に存在します。
(「地上げ屋の放火事件」と言えばピンと来る人もいるんじゃないかな。)

都市伝説や陰謀論といえばそれまでですが、この映画はフィクションなので陰謀論じみた犯人が出てきても何も問題ありません。

また、レオンはサイコパスなので(後述)自分の野望のために一般人がどうなろうが知ったこっちゃないのです。

そういう事情も踏まえて、個人的にレオンは犯人としてとても良いキャラだと思います。

さて、
海底探索中、レオンの邪魔をしてきたのが第1被害者のシェリリン・タンです。

\シェリリン・タン/
タン
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

当時レオンの顧問弁護士を務めていた彼女は、その立場を利用して『紺青の拳』の情報をレオンから盗み取りました。そして自身が秘書として仕えるジョンハン・チェンに流します。

\ジョンハン・チェン/
チェン
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

チェンは手に入れた情報をもとに海底を捜索し、見事『紺青の拳』を発見。堂々と自分のものにします。
(以降、世界最高峰のセキュリティで紺青の拳を守る。これではレオンもなかなか手を出さない)

つまりレオンは 味方のはずのシェリリン・タンに裏切られ、長年の計画を邪魔された わけです。
──が、さすがのレオンもこの時点ではグッと我慢。
かなり悔しかったでしょうが、殺意までは芽生えていません。

さて、レオンを出し抜き『紺青の拳』を手にしたジョンハン・チェンですが、彼は大の武道好きでした。
そして何をトチ狂ったのか、空手大会の優勝者に『紺青の拳』をプレゼントすることにします。
(コナンいわく「金持ちの道楽」)

空手大会のことを知ったレオンはさぞ歓喜したことでしょう。
確実に『紺青の拳』を手に入れるため、国内最強の武闘家ヘッズリを雇います。(※ヘッズリは「優勝後は紺青の拳をレオンに渡す」という契約を結んでいる。)
そうして手に入れた『紺青の拳』を海賊に差し出すことで街を破壊し、理想の都市を作る予定でした。

\ヘッズリ/
ヘッズリ
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

しかしここで再びシェリリン・タンの邪魔が入ります。

シェリリン・タンは世界トップランカーの空手家京極誠のスポンサーになり、彼を大会に出場させていました。
京極の実力を知ったレオンは「このままではマズイ」と考え、京極を大会に出場させない方法を考えます。それが京極のスポンサーであるシェリリン・タンの殺害でした。

シェリリン・タンはレオンを裏切り、『紺青の拳』を横取りした人物でもあります。
そういう過程もあって、ことごとく自分の邪魔をする彼女を殺したというわけです。




物語の裏側

紺青の拳の情報を盗み、京極のスポンサーになる等ことごとくレオンの邪魔をしたシェリリン・タン。
そんな彼女を裏で動かしていたのはリシです。彼女はリシの指示に従っていたに過ぎません。

\リシ/
リシ・ラマナサン
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

頭の切れるリシは、「レオンから『紺青の拳』の情報を盗み出し、チェンに横流し」するようシェリリン・タンに指示します。これは「変わり者のチェンが『紺青の拳』を手放す可能性は非常に高い」と睨んでのことでしょう。
⇒案の定チェンはあっさりと『紺青の拳』を手放します。

そしてリシ&タンは世界トップランカーの京極をシンガポールに招き、彼を優勝させようと考えました。
「京極は一般人だから強固な金庫もないはず。京極が相手なら『紺青の拳』を盗む(貰う)のは簡単だ」──とでも話していたんでしょうね。
(リシ達は京極の恋人がまさか鈴木財閥の令嬢だとは知らないので笑)

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リシが園子と京極の関係に気付いたのは映画冒頭のチンピラ騒動でしょう

チンピラが園子に襲い掛かる前、慌てる蘭や新一のそばをリシが無言で通過しています。しかし彼はチンピラを止めず傍観。
また、その数分〜数十分後には何事もなかったかのように「はじめまして」と小五郎一行に声をかけていますね。

つまりリシは「京極が園子を助ける様子」を警察としての行動よりも優先して確認しています。
また、「スポンサーの消えた京極のサポートをなぜか(世界規模の財閥の)鈴木財閥が突然始めた」となれば深く調べずとも察するというものです。(そもそもリシと出会ってから京極と園子は堂々とイチャイチャしていたし)

トリック

シェリリン・タンが殺害される直前、映画冒頭で彼女がワインを飲んでいた場所は『マリーナ・ベイサンズホテル』の屋上です。
このホテルのエレベーターは全階直通ではありません。シェリリン・タンのいる屋上から1階に移動するには、32階でエレベーターを降りて、また別のエレベーターに乗り換える必要がありました。

そのためシェリリン・タンは屋上から32階に移動後、そこで一度エレベーターを降ります。そして次のエレベーターを待っていたところでレオンの秘書のレイチェルに襲われました。

\レイチェル/
レイチェル
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

レイチェルはレオンが借りていた32階の1室にシェリリン・タンを連れ込み、レオンがそこで彼女を刺殺。シェリリン・タンの死体はレオンが準備していたスーツケースに入れられました。
(つまり殺害現場はエレベーターではなくホテルの32階)

スーツケースの伏線

シンガポール警察の事情聴取で、レオンは「修理に出していたスーツケースを引き取りに来ていた」と証言していています。警察は中身が入っていないことを確認し、「事件とは関係ない」と誤った判断をしました。
=この描写がトリックの重要な伏線になっています。

レオンの大型スーツケースは、シェリリン・タンの遺体を運ぶためだけに使われました。つまり警察が中身を確認できないのは当然です。
また、映画冒頭でも大きなスーツケースを持つレオンの姿がしっかりと映っていましたね。
つまりコナン&キッドの推理ショーが始まる前に、観客はレオンのトリックを見抜くことが可能だったわけです。いやあ、面白いですね!

アリバイ工作

さて、邪魔者のシェリリン・タンを殺したレオンは、秘書のレイチェルを使って本格的なアリバイ工作を始めます。

映画冒頭の『ショッピングモールで目撃された血塗れのシェリリン・タン』の正体は秘書のレイチェルでした。
彼女は背中にダミーナイフを刺し、タン本人の血を使ってエレベーターからショッピングモールまで移動。わざと一般人にぶつかり倒れ込むことで、ショッピングモールを軽いパニックに陥れました。
そしてレイチェル(タン)が倒れると同時にショッピングモールが停電。
殺人と停電により完全にパニックを起こした人々は一目散に現場から逃走します。そこにレオンがシェリリン・タンの遺体が入ったスーツケースを持って登場するのです。

暗闇の中、周囲に誰もいないことを確認したレオンは持ち込んだスーツケースからシェリリン・タンの遺体を取り出し、レイチェルが倒れていた場所に置き直します。
その間にレイチェルは着替えを済ませ、現場から立ち去りました。




ホテルから移動した理由

シェリリン・タンに変装したレイチェルがわざわざ血塗れでショッピングモールへ移動したのは、「レオンのアリバイを作るため」と「目撃者をゼロにするため」です。

アリバイ工作
レイチェルがエレベーターからショッピングモールへ移動し始めた時間帯、レオンは別のエレベーターに乗っていました。
警察は犯行現場をレオンが乗っていない方のエレベーターだと考えていますから、アリバイのあるレオンに犯行は不可能。
つまりレオンはレイチェルを共犯者にすることで自分のアリバイを作りました。

目撃者をゼロにする
このトリックは「遺体をすり替える際の目撃者がいないこと」が必須条件となります。
ホテル内ではどんなに騒ぎを起こしても上層階にいる人が次から次へと脱出のために湧いて出てくるので遺体のすり替えはできません。(ホテルから完全に人がいなくなる頃には警察が到着する。)
そのためレイチェルをショッピングモールまで歩かさせ、人目を盗んで遺体とレイチェルを交換しました。

爆発させた理由

映画の冒頭で爆発が起きたのは防犯カメラを切るためです。
ショッピングモールの駐車場を爆発させることで停電を起こし、館内の防犯カメラを無力化。レイチェルと遺体をすり替えました。

キッドカードがあった理由

シンガポール警察が「シェリリン・タンが襲われた現場」と判断したホテルのエレベーターの壁にはキッドカードが貼り付けられていました。
これは黒幕のリシが捜査中に貼り付けたものです。

「怪盗キッドは人殺しをしない」というのは世界各国で共通の認識となっています。当然リシもそれを知っていました。
キッドを殺人事件の容疑者として扱えば、彼は汚名を晴らすため必ずシンガポールにやってくる。そうなれば自然と『紺青の拳』の存在も知るはずです。
キッドをシンガポールに誘き寄せ、『紺青の拳』を盗ませることでレオンの邪魔をすることがリシがキッドカードを貼り付けた理由です。
(リシはレオンに恨みがあるだけ。別に宝石には興味がないのでしょう)




第2の殺人事件

レオンの秘書レイチェルが金庫室から発見された事件。
第一発見者および容疑者は怪盗キッドになりました。

殺害の動機

シェリリン・タンが殺されたことから身の危険を感じたレイチェルは、名探偵毛利小五郎に助けを求めます。しかしレイチェルはレオンによって監視されていました
レオンはレイチェルの裏切りを察し、自分の計画が小五郎にバレる前に彼女を殺します。

つまりレイチェルの殺害動機は口封じです。

また、一連の事件をキッドの犯行に見せかけるため、キッドが変装するであろうレイチェルに的を絞った、というのもあります。
(警察にキッドを逮捕させることで紺青の拳をキッドから守る、ということ)

ホテルのバーラウンジで小五郎とレイチェルを見ていた怪しいテーブル席の男がレオンの手下です

トリック

ありません!!!!!!!!!
レオンが金庫室の管理をしていたから。以上。

sheと船の結び付き

彼女が自分の血で書き残したのは「she」という文字。
英語では船などの乗り物・国・海・月などを「she(彼女)」で表します。
逆に山・太陽などは「he(彼)」です。

「she」の3文字だけではシージャックを連想するのは難しい……というか無理です。
しかしレイチェルは小五郎のパスポートケースに中富海運のメダルを忍び込ませていました。
コナンとキッドは中富海運のメダルから「she」が船を指すのだと推理。

「中富海運の船に何か隠されている」と推理したコナンは、灰原の力を借りてシンガポール付近を航行中の中富海運の船の動向を探り、シージャックに辿り着きます。

レイチェルは小五郎を名探偵だと思っていました。
そのため「自分が死ぬ前に渡した中富海運のメダルの意味に気づいて欲しい」「レオンの破壊工作を止めてほしい」という願いを込めて、「船」というメッセージを強調させるために「she」のダイイングメッセージを残しました。つまりこのダイイングメッセージは小五郎に宛てられたものなのです。

小五郎が空手大会の会場に入れなかったのは首から下げたパスポートケースにメダルが入っていたからです。(金属探知機がメダルに反応)
メダルを忍び込ませたのはレイチェル。
バーでわざと小五郎にぶつかった際、忍び込ませたものと思われます。

メダルを小五郎に託した意味

自分が殺されたときの保険だと思います。

レイチェルは自らの危険を察知していました。だからこそ小五郎に近付いたのですが、それすらレオンにはお見通しだった。
なんとか「明日のお昼に絶対会ってください!」とアポイントを取ることは出来ましたが、はたして自分が明日の昼まで無事かは分からない。

けれど中富海運のメダルを小五郎に忍び込ませれば、もし自分の身に何かが起きてもきっと名探偵(とレイチェルは思っている)の毛利小五郎がレオンの暗躍に気付いてシンガポールを守ってくれる、と考えたのかなと。

小五郎への無言電話

マリーナ・ベイサンズホテルのバーで飲んでいた小五郎のもとに1本の電話が掛かってきますが、彼に電話を掛けたのはレオンです。
レオンは部下を使ってレイチェルを監視していました。
(バーのテーブル席あたりで酒を飲んでいる男がレオンの部下です)

レイチェルが小五郎に接触したのを知ったレオンは、2人を引き離すためホテルのフロントに小五郎宛で電話を掛けます。
彼の目的は「レイチェルを小五郎から遠ざけること」。レオンの目論見通りレイチェルは小五郎に真実を話すことが出来ず、そのまま殺されました。




ひき逃げ事件

園子交通事故
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

京極と園子が食堂で食事中、チンピラに絡まれて乱闘になります。
助けを呼ぶべく飛び出した園子をパトカーで轢いたのもレオンです。

犯行動機

紺青の拳を狙うレオンは、京極に大会で優勝されると非常に困ります。
そのため京極に「君の力は愛する人を不幸にする」と暗示をかけ、わざと園子を傷つけました。

ちなみにチンピラ3人組を用意したのもレオンです。
京極の目の前で園子を襲わせ、彼の戦意喪失を狙いました。

レオンは他人の感情に共感できないサイコパスです。
現地住民を追い出すには新しい家を用意すればそれで良いと思っているし(人間が家に抱く愛着や思い出を理解・想像できない)、障害を排除するためだけに平気で殺人を重ねています。
犯罪行動心理学を学んだのも自分がサイコパスだから、といわれると非常に納得できます。
(もしかしたら脚本段階ではそういう設定があったのかもしれない)

もしも京極が大会に出場していたら確実に命を狙われていただろうな、と思いますし、京極は棄権して正解でした。




リシの犯行動機

黒幕として登場したリシ。
彼は父親を殺された恨みからレオンに復讐を企てます。

キッドを呼び寄せたり海賊に「園子を襲えば多額の身代金が手に入る」と入れ知恵したのも、全てはレオンの邪魔をするため(=レオンの手駒を奪うため)です。

リシの父親は「海賊王の宝」である『紺青の拳』を探す海洋研究家。
同じく『紺青の拳』を狙うレオンは、『紺青の拳』を手に入れるためだけにリシの父親を殺害しました。

誰がリシの父を殺したか

リシの父親は『海に落ちた仲間を助けるため』船を飛び降り、海に入りました。そして高速でやってきたモーターボートに轢かれて死亡します。

このとき最初に海に落ちた男は
「誰かに背を押されたんだ!」と言っており、直後、船内にいたレイチェルが意味深なカットで現場を後にします。

つまり乗組員を海に突き落としたのはレイチェルです。

また、助けに入ったリシの父親をモーターボートで轢き殺したのは中富とレオンの2人組です。
(中富がボートを運転し、レオンは優雅にワインを飲んでいた)

計画を立てた主犯はレオンですが、その裏には協力者がいたわけですね。

レオンへの感情

リシの父親が死んだのは5年前です。
そこから父の死について調べた結果、彼はレオンが真犯人であることを突き止めた。

映画の序盤でリシはレオンのことを「先生」と呼び慕っていますが、おそらくリシが好意的な感情を持ってレオンに接したことは一度もなかったかと。




キッドとリシの繋がり

怪盗キッドこと黒羽怪斗は、父親の黒羽盗一を謎の犯罪組織に殺されています。
彼は父の死の真相を探るため2代目怪盗キッドとして犯罪者になりました。

対して、リシもキッド同様、父の死の真相を探っていった結果犯罪者になりました。

このあたりの無言の対比は製作陣が狙って作ったものだろうな、と思います。

去年の映画ゼロの執行人でも、主役の安室透(降谷零)と犯人が共通して「大切な人の自殺&自殺に追い込んだ人物への私怨」を抱えていたので。(降谷の場合は唯一無二の幼馴染で親友のスコッチ・諸伏景光が自殺しており、それが原因で赤井秀一を殺したいほど恨んでいる)

怪盗キッドが宝石を返した理由

キッドは宝石を盗んだあとは必ず持ち主のもとに返しています。
というのも、キッドは父を殺した犯罪組織に繋がる幻のビッグジュエル『パンドラ』が欲しいだけで、それ以外の宝石は必要ないんです。

『パンドラ』は月の光に当てることでしか見分けることができないため(月の光で赤く光る)、キッドは宝石を盗んだあと月明かりに翳し、偽物であれば持ち主に返すことにしているのです。

京極のミサンガ

レオンの「君の拳は何のためにある?それが分からなければ君の愛する人は不幸になる」みたいな暗示と共に付けられたミサンガ。
結局答えが出ていないというオチはさておき、「なぜコナンとキッドがミサンガの暗示を知っているのか?」という疑問があります。

  1. ふつうに推理した説
    キッドとコナンは「答えは出たかな?」と京極に再度訊ねるレオンを目撃しています。彼が犯人だと睨んでいた2人にとって、それは異様な光景に映ったはず。
    しかも京極の腕には園子も知らない謎のミサンガが付いている。(園子が「そのミサンガなに?昨日は付けてなかったよね」と訊ねるシーンがあり、その会話をコナンとキッドは聞いている)
    となればレオンが京極に何かを仕掛けたのは火を見るよりも明らかなので、「ミサンガを壊せば京極は闘える」と推理した。
  2. キッドが全ての話を聞いていた説
    キッドは清掃員や警備員として様々な場所に出没しています。
    レオンと京極の会話を最初から全て聞いており、ミサンガと暗示の関係性も知っていた。

蘭がキッドを見抜くまで

プールで手を繋ぐ新一と蘭
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

シンガポール到着直後、新一が小五郎のことを「おっちゃん」と呼びます。
新一は小五郎のことを「おじさん」「毛利さん」としか呼ばないので違和感を覚える蘭ですが、おそらくこの時点ではキッドの変装を確信していません。
「もしかしてキッド? でもなあ……」くらいかと。

しかしレオンと初めて顔を合わせた際、彼は新一の手を見て「マジシャンのように細い」と言います。蘭もこの発言を聞いていました。
それを踏まえてのプールシーンです。

蘭は積極的に新一に近づき、「照れないで」と言いつつ新一の手を握ります。
このとき新一の手を確認し、キッドの変装を確認したと思われます。




明かされなかった謎

マーライオンの赤い水

赤い何かを吐くマーライオン
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

映画冒頭でマーライオンが赤い水を吐きますが、その理由は「世界中に散らばる海賊に決戦の合図を送るため」でした。
赤い水の正体は何だったのか、どうやって仕込んだのか、そのあたりは謎のままです。

映画を観ている最中は「他の方法でも良かったやろ!」と思っていたのですが、「シンガポールを象徴するマーライオンが血を連想させる赤い水を吐く」というのは最高に分かりやすい合図だな、と考え直しました。
レオンと海賊は連絡先を交換していたわけでもなさそうなので、「間接的に意思を伝える方法」としては合理的だったと思います。

一瞬で変わるコナンの肌色

褐色コナン
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

キッドに拉致され、スーツケースで輸出されただけのコナンが「なぜ日に焼けているのか?」が謎でした。
まあキッドが何かしたんだろうな、と思って深く考えずにいたんですが、帰国後の空港では一瞬にして肌が白くなっていました。

なんやそれ!と思いましたが、まああまり深く考えたらダメですね。

映画『迷宮の十字路』のときのようにファンデーション等で細工をしている可能性もありますが、なんとも言えません。




描いてほしかった部分

レオンの名探偵ぶり

不敵に笑うレオン
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

レオンは犯罪行動心理学に通じており、「シンガポールの名探偵」とコナンは解釈していました。
序盤こそ新一に変装したキッドを「マジシャンのよう」と言っていて、コナンも「油断できない相手」と見なしていましたが……

結局、彼が名探偵のように振る舞う描写はあまりなかったですね。せいぜい「キッドの侵入・脱出に備えて京極誠を配備しておいた」くらいでしょうか?それとも「キッドを罠に嵌めるためレイチェルを利用した」こと?

コナンの切れ者ぶりに慣れている観客にとって、レオンを「名探偵」という設定にされてもあまりピンと来ない気がします。

リシとレイチェル

レイチェルがリシ側に寝返っていたのは最後の最後に分かりましたが、そう思わせるだけの描写が全くなかったように思います。
たとえば中富海運のメダルを小五郎に渡すよう仕向けたのがリシで、金属探知機で引っかかった小五郎に「服の中に何か入っていませんか」とシレッと言えば小五郎(コナン)はレイチェルと中富海運、延いてはレオンの計画にもっと早く気づけたはずです。

レオンの計画を邪魔したいリシにとって、小五郎にレオンの邪魔をさせるのはキッドを使うよりもはるかに効率的だったはず。
「自分の手で殺したいからレオンが逮捕されると困る」というのは分かりますが、なんにせよリシとレイチェル、海賊、弁護士のシェリリン・タンが裏で繋がっている描写が一切なかったのは残念です。




疑問点

紺青の拳の持ち主

キッドは盗んだ宝石を本来の持ち主に返すのがポリシーです。
映画のラストで紺青の拳をレオンに返していますが、それレオンのじゃないよね(笑)

公式な持ち主は資産家のジョンハン・チェンです。
百歩譲って「君のお父さんのものだよ」とリシに返すのなら分かりますが、なぜレオンに渡したのか。

制作側のうっかりかな?と思って受け流していますが、これ実際のところどうなんだろう?
いつもの「(持ち主に)返しといてくれ」というパターンかもしれませんが、この状況でレオンに渡すのはどうなの?笑

京極の絆創膏(プリクラ)

京極が絆創膏を外さない理由が「園子とのプリクラを貼っていたいから」。

京極と園子のプリクラって何……?
漫画・アニメ共にそんなものは出てきていません。映画内であれだけ引っ張っておいて、何のフラグもなく飛び出す新情報に目が点です。

そもそも京極は初登場回から最新話まで常にあの場所に絆創膏を貼っていました。
ということは初登場回は元カノのプリクラでも大事に貼っとったんか?と邪推したくなりますが(笑)、まあ、まあ…………

……内輪ネタかい!
せめて2人でプリクラを撮るシーンが回想とかであればさ、分かるけどさ。




小ネタ

京極と北斗の拳

ドラゴンボール京極
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

「ドラゴンボール」「北斗の拳」と話題の京極誠の謎の赤いオーラですが、原作者の青山剛昌先生や小学館などもこういう反応をあらかじめ予想していたらしく、北斗の拳の作者原哲夫先生と事前にコラボイラストを制作されています(笑)

誰の意見で赤いオーラが誕生したのかは分かりませんが、「青山さんが認めてるならまあ良いかな」と。笑

コナンとカルロスゴーン

コナンのスーツケースとカルロスゴーン
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996.

キッドは「X線を通さない特殊加工されたスーツケースを使った」と言っていますが、現実世界でX線を通さないスーツケースを使うと空港内で中身を開けられます
しかしこういう「非現実的な方法をあえて使う」のはフィクション世界の常識でもあるのです。むしろ再現可能な違法行為は悪用されるので、たとえ秀逸なトリックでも絶対に採用されません。

ここで違和感を覚えた人も多いでしょうが、「ハハッ」と笑って流しましょう。

…………

…………

追記&悲報(2020.01.06)

なんと、元日産の会長カルロス・ゴーン被告に再現されてしまいました。笑
(音響用の大型の箱に入り、パスポートを使わず関西国際空港から秘密裏に出国)

いやあ……「何してんねん関空」という呆れと、「ほんまにやる人おるんや!」という衝撃と、「さすがミステリー作家の脚本やな!」という笑いがですね、溢れてきます。
ゴーン被告は箱に直接穴を開けて酸素を確保していたようですが、さすがにキッドが用意した「移動中も快適な空間」までは作り出せなかったはず。たぶん、トルコ&レバノン到着時には全身バキバキになっていたんじゃないでしょうか(笑)

最後のトランプ

ラスト1発となったトランプ銃から出てきたのはジョーカーでした。暗示にかけられていた京極誠を解放するためのトランプです。
「だから何やねん」と言われてしまえばそれまでですが(笑)、制作側の細かな演出が光った場面かと思います。

庇護さんストラップ

灰原のスマホに付いていたストラップはサッカー選手の庇護さんのストラップです。
取れた片目の代わりにコナンがマジックペンで雑な補修をしたアレですね(笑)

キッドの助手・寺井さん

初代怪盗キッド(今のキッドの父親)時代から助手を務めてきた寺井さんが映画に紛れ込んでいます。
(キッドこと黒羽快斗が「じいちゃん」と呼んでいる人のこと)

アイコン

映画の終盤、キッドが飛び立つ前に帽子を被り直している男性がそうです

OPの隠れキッド

オープニング(「俺は高校生探偵工藤新一!」の部分)にキッドマークが(たぶん)4つ隠されています。
コナンは過去作品でもオープニング部分に映画のテーマが隠れされているので、映画を楽しむ1つの要素でもあります。

たとえば『天国へのカウントダウン』では冒頭のステンドグラスに富士山が描かれています。




感想

シンガポールいきてぇ。

マリーナ・ベイサンズホテルのプールで夜景を眺めたい。シンガポール行きたい。ホテルも夜景もマーライオンも舞台がとにかく全て綺麗でしたね!!!今年もやっぱり作画が良い!

それはさておき。
キッドが出てくる映画は『世紀末の魔術師』以外あまり好きじゃないんですが(キッドとコナンの馴れ合いが好きじゃないので……)、今作はあくまでキッドとコナンが互いに一線を引いた上で動いていたのでホッとしました。
新一に変装していたことで「もしも新一とコナンが同じ空間にいたら?」という茶番劇を楽しく見れたのも良かったです。

他にも小五郎と蘭の武術が活きていたこと、2人の親子愛が強いこと、園子が日本屈指の令嬢であること──など、原作の設定を活かしたシーンがたっぷり描かれていて楽しかったです。特に小五郎がいっぱい動いていたのが久しぶりで嬉しかったなあ。

ただ、今作は広げすぎた風呂敷を畳めなかったという印象。

コナン、キッド、新一(仮)、蘭、京極、園子、小五郎の6人がとにかく動き回るのは嬉しかったです。
しかし各キャラクターの動きと主軸のストーリーとの相性が悪く、そのせいで終盤の推理ショーや脱出劇が陳腐なものになっていました。

特に蘭がいる建物にロケットランチャーを撃たせて建物ごと破壊するコナンくんにはびっくり。一体どうした……?
キッドが「本気か?」みたいなことを訊いていましたが私も全く同意見です。むしろ正気か?
「とりあえず何かに捕まることで落下ダメージに耐える」作戦、めちゃくちゃ無謀だし名探偵っぽさが皆無で悲しい。誰でも出来るよ。タイタニックでも沈没前に「何かに捕まれ!」ってやってたし。

また、ストーリーを進める上での蛇足が非常に多かったようにも思う。
たとえば中富海運、いる?
「コンテナ船を街にぶつけるため」とはいえ、結局は海賊が銃を持ってジャックしています。その船が中富海運である必要性が全く見えてきません。
中富海運が全面的に協力していたなら分かります。しかし船員を脅して航行している以上、「一般人の船で良かったじゃん…」とも思うのです。

メタ的な事情で言えば「中富海運がいなければコナンはシージャックに辿り着けない」のは分かります。──が、その辺りは脚本家・演出家・監督の腕次第のような……

登場人物が多すぎる今回の映画に「中富禮次郎」というキャラクターを出す必要性が分からない。中富が出ていた時間を黒幕に割いてくれと思う。

例えば『14番目の標的』など登場人物がやたらと多い作品は他にもありますが、それらは「出場と退場のタイミングがしっかりしている」んです。
前半に登場した容疑者はサクッと退場していますし、後半に登場する容疑者も前半にはあまり登場せず、ラストシーンでコナンの周りに立っているオリジナルキャラクターは犯人ただ1人。

一方で今作のラストシーンに出てくるオリジナルキャラクターは犯人・黒幕・海賊(超大量)・中富・武道家で、そこにコナン・キッド・蘭・小五郎・園子・京極となるわけですから、クライマックスなのにごちゃごちゃしていて分かりづらい
最後のドタバタ脱出劇もホテル内部からシンガポール上空など場面がコロコロ移り変わり、敵も各地に散っているため「ところで今は何をしてるの?」と観客に思わせがち。

もっとストーリーを重視できていれば黒幕の魅力も上がったでしょうし、脱出シーンも工夫が出来たと思いますから、色々ともったいないな……と。面白かったですけどね!




劇場版,考察

Posted by HAGA